社会保障が財源の話からになってしまう理由
NPO法人POSSEの岩本菜々氏と小倉將信こども政策担当大臣の議論が話題になっていた。
この記事の中で、岩本氏は「社会保障の話になった途端、いつも財源の話になる」という批判をしているようである(私は番組は見ていない)
この批判に対して、「おそらくこういう理由ではないか」と考えていることがあるので、私見を述べてみたい。
ちなみに、岩本氏の「奨学金の返済に困っている人への対策を」という意見はもっともだと思うし、若者への支援策を拡充すべきだと私も考えている。特に給付型奨学金は是非とも拡充して欲しい。岩本氏への批判ではなく、あくまでも「社会保障になると財源の話になってしまうのはなぜか」について述べる。
日本の歳出の現状
財務省が公開している統計データ*1を利用して、平成24年*2から令和2年までの歳出の推移をグラフにしてみた。
歳出金額の大きい順に、社会保障関係費、国債費、地方財政費となっている。グラフを見れば一目瞭然であるが、社会保障費の歳出額は圧倒的で、かつ歳出額は年々増加傾向にある。
社会保障がまず財源の話になる理由
歳出金額が圧倒的に大きく、かつ年々増加傾向にある社会保障の分野で、なにか新しいことをやろうとしたときにまず財源の話になってしまうのは仕方のないことではないだろうか。
国民の反対を受けながらも、年金受給年齢の引き上げ、社会保障分野の給付金の減額や控除の見直しなど、社会保障分野の歳出額を減らそうとしている中で、「こういった新たな社会保障政策を実現したい」という提案は財務を担当する立場からすれば受け入れづらいことだと考える。
もちろん、実際に生活に困っている人たちからすれば、このような事情は関係ないし、政府の立場の人からすると、国民には説明しづらい、理解を得づらいことだと思う。
岩本氏は、社会保障は財源の話になるのに、オリンピックや防衛費では財源の話はほとんどなかったと批判している。
オリンピックがあまり財源の話にならなかったのは、一時的な費用であることが理由だと思う。一時的な費用ということでれば借金(国債)で、ということになりやすいと理解している。
また、防衛費については、たしかに増額ありきだった印象がある。そのようになった理由はよく分からないが、東アジア情勢の不安定化による防衛費増額の議論を今まで散々やってきたにも関わらず、増額をしなかった(GDP比を変えなかった)経緯があったが、ロシアのウクライナ侵攻で防衛費増額を要求していた集団からの要望を受け入れざるを得なかった、といった事情ではないだろうか。